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TISFDが不平等および社会関連財務情報開示フレームワークの草案を公表。企業が押さえるべきポイントは?

はじめに
サステナビリティに関する情報開示は、企業経営においてますます重要なテーマになっています。2026年5月26日、TISFD(不平等および社会関連財務情報開示タスクフォース)は、情報開示フレームワークの草案(ベータ版0.1)を公表しました。

本記事では、この新しいフレームワークの概要と5つの「一般要求事項」について解説します。気候変動や自然資本に続き、「社会・人」の領域が重要視される中、サステナビリティのご担当者が今後の対応を見据える上で知っておきたいポイントを整理しています。次年度以降の情報開示の準備にぜひお役立てください。
フレームワーク草案の概要と公表の背景
TISFDは、すでに多くの企業で対応が進むTCFDやTNFDの動きを基盤として、2024年9月に発足しました。今回の草案が開発された背景には、「不平等やより広範な人に関連する課題が、企業の業績、投資成果、あるいは経済や市場の安定性を大きく左右している」という認識が世界的に高まっていることが挙げられます。今回の草案の序文でも、次のように強調されています。
「組織や投資家は今、経済的・社会的な深い変化の時期を乗り越えようとしています。こうした状況において、不平等や人に関連する課題は、企業のレジリエンスと長期的な価値創造の中心として見なされるべきです」
企業や金融機関による、より良い意思決定、投資家への情報提供、意思決定への有用性の向上、そして説明責任の強化をサポートすることが、本フレームワークの主な狙いです。
既存の開示基準(ISSB、GRI、ESRS)との整合
新しいフレームワークの登場は「また対応すべき基準が増えるのか」という懸念につながるかもしれません。しかし、TISFDは今回の草案で「グローバルなサステナビリティ報告基準間の調和を促進し、企業の開示負担を減らすこと」を目指すとしており、ISSB基準やGRIスタンダード、ESRSといった既存の基準と整合するように設計されています。
また、TCFDやTNFD、有価証券報告書に適用されるSSBJ基準でもベースとなっているおなじみの「4つのコア・コンテンツ(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標及び目標)」を踏襲しています。
ただし、TCFDやISSBの「リスク管理」、TNFDの「リスクおよびインパクト管理」については「インパクトおよびリスク管理」へと意図的にアレンジしています。 TISFDは、人に関連する課題において「自社が与えるインパクトの特定・評価が、効果的なリスク管理の出発点(前提)となる」としており、インパクトをあえてリスクの前に配置することでその重要性を強調しているようです。
また、このように既存の制度開示の枠組みと合わせることで、「人、気候、自然」といった課題を開示しやすくしています。

フレームワークが求める5つの「一般要求事項」と開示トピック
今回発表された草案は、以下の「一般要求事項」として下記の5つが説明されています。
マテリアリティ:企業は、人に関連するインパクト、依存関係、リスク、機会(IDRO)に関する重要な情報を開示することが求められます。TISFDのフレームワークは、ISSBが重視する財務的マテリアリティや、GRI・ESRSが重視するインパクトマテリアリティ(およびダブルマテリアリティ)など、企業が採用する既存の様々なマテリアリティ定義に順応・対応できるように設計されています。
システム関連情報:経済や社会全体へのリスクに関連する、人に関する外部性について、投資家の情報ニーズを満たす開示を行うことが求められます。
ステークホルダー・エンゲージメント:人権デュー・ディリジェンスなどを通じて、影響を受けるステークホルダーと企業がどのように対話・関与してきたかを説明します。
対象範囲:評価と開示の対象範囲、その範囲を決定したプロセス、および今後の拡張計画について説明することが求められます。自社の従業員だけでなく、調達から販売にいたるバリューチェーン上の労働者、消費者、そして地域社会に対するインパクトも報告の対象として推奨されています。
時間軸:短期、中期、長期のそれぞれの時間軸を考慮して評価・報告することが推奨されます。
このような一般要求事項をおさえたうえで、人権、労働者の権利、ウェルビーイング、不平等、人的・社会資本などの、多岐にわたるトピックの開示を検討していくことになります。
おわりに
TISFDへの対応に際して重要なことは、自社の事業活動が社会に及ぼす影響(インパクト)を正しく把握し、それを中長期的な企業価値の向上やリスクマネジメント、すなわちレジリエンスの強化に結びつけるための戦略的なツールとして位置づけることです。最終版の公表は2027年後半と少し先になりますが、具体的な指標と目標など、今後さらに開発が進められる予定となっています。
まずはGRIスタンダードなどの既に活用されているガイドラインを今一度見直し、バリューチェーン全体での人権デュー・ディリジェンス等の取り組みを通じて、社内の現状を整理することから始めてみてはいかがでしょうか。
レポートやサイトを作成する「開示」の工程だけでなく、その前段部分となる社内の「活動」の部分を変えていくことが、今後のスムーズな情報開示に向けた確実な第一歩となるはずです。
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