公開日:2026.06.08

最終更新日:2026.06.08

オンライン版統合報告書とは?メリット・デメリットと3パターンの企業事例 

はじめに

統合報告書の発行は、多くの企業にとって当たり前の取り組みとなりました。上場企業だけでなく、一部の非上場企業でも発行するようになっています。PDF冊子の形が主流となっていますが、Webページの形式で閲覧できる「オンライン版統合報告書」を公開する企業が増えています。

背景には、投資家やステークホルダーの情報取得行動の変化があります。必要な情報を検索して読むことが一般化し、200ページ近いPDFを最初から最後まで読むケースは限られています。また、AIの活用が増えてきたことから「機械可読性」への配慮も一因と考えられます。

しかし、オンライン版にはそのための制作コストや運用負荷も伴うため、「本当に必要なのか」「どのレベルまで対応すべきか」と悩む担当者も少なくありません。

本記事では、オンライン版統合報告書のメリット・デメリットを整理した上で、代表的な3つの制作パターンを紹介します。

オンライン版統合報告書のメリット・デメリット 

オンライン版統合報告書とは、統合報告書のコンテンツを、企業のコーポレートサイト内にある、サステナビリティや投資家向けのページ上で閲覧できるようにしたものです。

PDFとしてまとめたものを掲載するだけでなく、トップメッセージや価値創造ストーリー、マテリアリティなどのコンテンツをHTMLページとして公開するケースが増えています。

HTML化された情報は検索エンジンに認識されやすく、投資家や求職者、取引先などが必要な情報へアクセスしやすくなるという特徴があります。

■メリット

 オンライン化の最大のメリットは、上記でも触れたように情報の検索性や分析性が向上し、読み手が求めるデータに素早くアクセスできる点です 。また、動画を活用したり、デザインの幅が広がるためトップや担当者の想いを伝えやすくなるという点もあります 。

その他にも、PDFのレポートに比べて情報が更新しやすいという利点もあります。

■デメリット

一方で、ウェブサイトの大幅改修や新たなページを設置するには時間とコストがかかる可能性があります 。 また、ページ数の多い統合報告書をそのままHTML化してしまうと、読み手が必要な情報を見つけにくくなることがあります。単純なHTML化ではなく、情報設計や導線設計が重要になります。

オンライン版統合報告書の3つのパターン 

オンライン版には、主に以下の3つのパターンがあります 

1. すべてをHTML化する

PDF版のコンテンツをすべてHTML化して掲載するパターンで、データの検索性を最大化しています。オンライン版のみ作成している企業もあります。

事例:オムロンでは、統合レポートのPDF版とオンライン版の両方を作成しています。オンライン版では、関連ページへのアクセスしやすさにも配慮されています。

オムロン統合レポート2025(WEB版)

オムロン統合レポート2025(WEB版)https://www.omron.com/jp/ja/integrated_report/


2. 一部をHTML化する

PDF版の中で、特に読んでほしいトップや役員からのメッセージ、ストーリーや定量実績といった、一部コンテンツのみをHTML化するパターンです。

事例:デンソーでは、「CEO MESSAGE」などの役員層のメッセージや、「社外取締役鼎談」などのコンテンツをHTMLで掲載。「At a Glance」などその他のコンテンツは見出しのみオンライン版で掲載し、PDF版の該当ページにリンクさせています。

デンソー「統合報告書2025」オンライン版

デンソー「統合報告書2025」オンライン版
https://www.denso.com/jp/ja/about-us/investors/annual-report/integrated-report-2025/

3. 目次・見出しのみHTML化する

HTMLでは目次や見出しのみ掲載し、PDF版の該当ページにリンクさせるパターンです。オンライン版のメリットは限定的になりますが、簡易的な運用が可能になります。

事例:DNPでは「オンライン版」が目次のような役割を担っており、PDFの該当ページにリンクしています。PDF全体をダウンロードして、目的のページを開くよりも、辿り着きやすい設計になっています。

DNP統合報告書2025オンライン版
https://www.dnp.co.jp/ir/integrated-report/


おわりに

統合報告書には、企業の1年間の取り組みや成果を記録・開示する「年次報告書」としての役割があります。そのため、オンライン版を作成している企業の多くはPDF版を制作し、アーカイブとして閲覧できるようにしています。

オンライン版には検索性や更新性、情報へのアクセス性といった強みがあります。重要なのは、「PDFかオンライン版か」という二者択一で考えるのではなく、自社の目的や主な読み手に応じて最適な形を設計することです。

さらに、生成AIの普及によって情報の検索・取得方法は大きく変化しつつあります。AIによる検索や要約の対象となりやすいHTMLコンテンツの重要性は、今後さらに高まっていく可能性があります。企業が伝えたい情報を、必要とする読み手へ確実に届けるためには、コンテンツそのものだけでなく、その届け方についても見直していくことが求められるでしょう。

統合報告書の活用を検討する際には、「何を伝えるか」に加え、「どの媒体で、どのように届けるか」という視点を持つことが重要です。PDF版とオンライン版、それぞれの特長を生かした情報発信を検討してみてはいかがでしょうか。

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