TCFDとは、2016年に金融システムの安定化を図る国際的組織、金融安定理事会(FSB)によって設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(The FSB Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」のことで、2017年6月に以下を目的とした最終提言を公開しました。気候関連のリスクと機会について情報開示を行う企業を支援すること低炭素社会へのスムーズな移行によって金融市場の安定化を図ること※2023年7月に、TCFDの役割はIFRSに引き継がれることになりました。(FSBのリリース参照)TCFDの提言の内容■気候関連の「リスク」と「機会」が、財務に及ぼす影響下図のように、気候関連のリスクと機会が財務に及ぼす影響を整理しています。本文では 例えば機会としては「効率的な輸送手段の利用」「より効率的な生産・流通プロセス」などの資源の効率をあげています。 一方リスクについては、移行リスクと、物理的リスクの区分において、「操業コストの削減」「生産力の増大による増収」といった「財務への潜在的な影響」の存在など、具体例が説明されています。■開示が推奨される情報すべてのセクターに対して開示が推奨される情報と、業界別の補助ガイダンスが用意されている情報との2種類があります。すべてのセクターを対象とした情報としては、下記があがっています。【全セクターを対象とした開示情報】CDPやGRIも気候関連リスクや機会に関する企業の情報開示を求めていますが、気候関連のリスクや機会は中長期的に現れる場合が多いことから、戦略分野で利用される「シナリオ分析※」の手法を取り入れた情報開示を推奨していることがこの提言の特徴です。※シナリオ分析:戦略を立案する上で、不確実性(リスク)要因に対応するために、複数の異なる条件での戦略を分析する手法。事前にシナリオ分析をしておくことで、変動があった場合の対応策を事前に検討し、適切な準備をしておくことが出来る。TCFDは、シナリオの選択ついて下記を推奨しています。将来の結果について、望ましいものも望ましくないものも含め、妥当なバラエティーをカバーする複数のシナリオを選定することその際「国別約束(NDC)シナリオ」、「BAU(従来通り=ビジネス・アズ・ユージュアル)シナリオ※」など、組織に関連性の深いシナリオを選択することさらに地球の平均気温上昇を2℃までにとどめる「2℃シナリオ」も使用すること※BAU(従来通り=2℃を超える)シナリオ:温暖化対策をせず、現在の延長線上にある未来像を描いたシナリオ。なりゆきシナリオの場合、4度以上の温度上昇が起こるともいわれている。今後に向けてTCFDは「提言」として公表しましたが、「重要な検討事項とさらなる作業が必要な分野」として、以下のような内容を挙げており、まだ改善の余地がありそうです。他の報告関連の取り組みとの関係シナリオ分析(適切なシナリオと、それを支援するデータセットやツールの開発)データの利用可能性及び品質と財務的影響(気候関連問題が財務的影響にどう転化されるのか、理解と測定の向上)2018年12月現在日本の賛同企業・組織は40を超え、金融庁や日本証券取引所、環境省、経済産業省やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も含まれています。企業は自ら進んで、気候関連問題の財務的影響の分析・開示を進めていく必要があります。【参考】提言本文「Implementing the Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures」(TCFD)「気候関連財務情報開示タスクフォースによる提言」(提言の日本語版)