公開日:2026.03.30

最終更新日:2026.03.30

「サステナブル・ブランド国際会議2026」 参加レポート (企業のTNFD対応のいま) 

サステナブル・ブランド国際会議2026東京・丸の内が、2月18日から19日にかけて行われました。サステナビリティ領域の有識者や先進企業の担当者らが集い、サステナビリティに関わる幅広いテーマや課題についてセッションを展開するイベントです。2日間でのべ3,570人が来場しました。サステナビリティ・コミュニケートもメディアパートナーとして参加しており、セッションの一部を紹介します。

今回、編集部としてはDay1に行われたセッション「TNFDの今とこれから」に注目しました。セッションで先進事例として紹介されたのはヤマハとキリンホールディングスです。

ヤマハは音響機器や部品装置など複数の事業を持ちますが、楽器事業において自然資本(生物多様性)への依存を強く認識しているとのことでした。使用する木材の樹種が変わると音が変わるため、その楽器として成立しなくなってしまうのだそうです。木材デュー・ディリジェンスを実践し、合法性を確認した低リスク木材の調達は98.6%を達成しました。

キリンホールディングスは、TNFDが推奨するLEAPアプローチにいち早く着手した企業として知られています。「キリン 午後の紅茶」にはスリランカ産の茶葉が使われており、原料調達面で自然への依存関係があります。その量は日本が輸入するスリランカ産茶葉の約2割を占めます。キリンホールディングスは現在、調達先である農園に働きかけ、良質な茶葉を使用した商品を提供し続けることができるように、レインフォレスト・アライアンス認証の取得支援なども行っています。

生物多様性に関する国際的な動向としては、2022年の「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の採択や、2024年のGRIスタンダードの改訂版「GRI101:生物多様性2024」があります。これらの中ではネイチャーポジティブが本格的に求められるようになりました。自然関連の依存・インパクト、リスク・機会の分析およびTNFD開示は重要性を増しています。このほか、WWFがTNFDに関する企業の開示事例を調査した「2024年TNFD開示の潮流と日本企業の対応状況」も紹介されました。

登壇者の一人であるWWF東梅氏は「TNFDはコミュニケーションツールである」と説きます。TNFDページを公開して終わりではなく、その次が大切です。この話を受け、ヤマハの阿部氏は、「優先順位がTNFDで可視化され、社内に説明しやすくなった」と自社の経験を話しました。

また、コミュニケーション相手は社内にとどまりません。ビジネス視点では「原材料」とみなされがちですが、地域コミュニティの住人からするとその原料植物から構成される「自然」があるからこそ生活が成り立つ状況もあります。キリンホールディングスの美鳥氏も現地コミュニティのステークホルダーと目線合わせをするために、TNFDによる整理が役立ったことを紹介していました。

なぜ両社はこのように課題意識をもって取り組んでいるのか、それは自社の事業課題に向き合った結果のようです。たとえば、もし楽器に使用する木材の樹種が絶滅危惧種として保護対象となった場合、素材の調達が困難になるだけでなく、完成品の輸出が叶わなくなる場面も考えられます。生物多様性をヤマハの事業に直結する「貿易リスク」として扱っていたことが印象的でした。

TNFD開示はそのリスクを知るためのツールであり、活動を進めるための第一歩となります。先にご紹介したWWFのTNFDレポートにはすでにベストプラクティスが集まっており、これを真似すればよい設計になっていることも紹介されていました。

生物多様性の活動は一部の先進企業だけが行うものではなく、事業の存続に繋がるものです。東梅氏はセッションの最後に「次のフロントランナーは皆さんです」と締めくくりました。



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