気候変動と並び、自然関連の課題が企業の持続可能性に与える影響が認識されるようになったことで、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)提言への対応は、企業にとって重要度が高まっています。実際、TNFD提言に沿った開示を2026 年度までに公表することを宣言した企業「TNFDアダプター」の数は日本が世界最多となっており、多くの日本企業が対応し始めていることが伺えます。
本記事では、日本におけるTNFD開示の現状について考察した、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)「2024年度 サステナビリティ投資報告」内の「GPIFの国内株式運用会社が選ぶ『優れたTNFD開示』」と、WWFジャパン「2024年TNFD開示の潮流と日本企業の対応状況」の2つをご紹介します。
GPIFの国内株式運用会社が選ぶ「優れたTNFD開示」
GPIFは、長期的な投資収益を確保する観点から、自然関連のリスクが運用資産に影響を与えうる重要なリスクであると認識し、企業による情報開示に注目しています。GPIFは2025年8月29日に発行した「2024年度 サステナビリティ投資報告」において、国内株式の運用会社が選ぶ「優れたTNFD開示」を公表しました。
国内株式の運用を委託している20機関からの推薦に基づき、28社が「優れたTNFD開示」企業として選ばれました。特に3機関以上から高い評価を得た下記の7社については、運用機関からの具体的なコメントなども紹介されています。
アサヒグループホールディングス、キリンホールディングス、東急不動産ホールディングス、住友林業、王子ホールディングス、日本電気、三菱UFJフィナンシャル・グループ
GPIFが実施した上場企業向けアンケートでは、TNFD開示における課題として、参考となる好事例の少なさなどが挙げられていました。これらの好事例を共有することで、企業のTNFD情報開示の高度化を促し、エンゲージメントの推進を図っています。

GPIF『2024年度 サステナビリティ投資報告』を刊行しました
WWFジャパン「2024年TNFD開示の潮流と日本企業の対応状況」
WWFジャパンは2025年8月28日に、2024年にTNFD提言に基づく開示を行った日本企業65社を対象としたベンチマーク調査結果を報告書「2024年TNFD開示の潮流と日本企業の対応状況」として公開しました。この調査では、WWFジャパンが独自に設定した「TNFDキーポイント」(4つの重要項目)に基づき、日本企業の開示状況を分析しています。
「TNFDキーポイント」
TNFDで開示するマテリアリティ・アプローチの選択
自然関連課題(依存、影響、リスクと機会)の特定・評価、および優先地域の特定
ミティゲーション・ヒエラルキー(マイナスインパクト回避の優先)
IPLC(先住民族と地域社会)と、影響を受けるステークホルダー
同報告書では、それぞれの「TNFDキーポイント」について、2024年の開示で見られた傾向と今後の開示において期待したい点が紹介されているほか、日本企業の開示事例が取り上げられています。

WWFジャパン TNFDのベンチマーク調査結果に基づく報告書「2024年TNFD開示の潮流と日本企業の対応状況」を公開
今後のTNFD開示に向けて
両報告書は、TNFD開示によって企業が自然資本に配慮した事業に移行していくことを期待しています。その実現には、複雑なトレーサビリティの把握、マイナスの影響を減らすための戦略立案と実行力など、多岐にわたるノウハウが必要であり、時間を要するとされています。
GPIFとWWFジャパンの両報告書で、どのような開示が評価されているか、また今後の課題としてどのようなことが指摘されているかをご確認いただくと、今後TNFD開示を始めたり、改善したりしていくうえで参考になるでしょう。
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