「自然関連財務情報開示タスクフォース」(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)の略称です。2021年6月に正式に発足しました。国連や英国政府、金融機関やTCFD事務局の他、WWFなどが本タスクフォースを主導しており、TNFDには「常に変化する自然関連リスクを組織が報告し、行動を起こせるようフレームワークを提供することで、世界中の資金の流れを自然にとってマイナスからプラスの結果へとシフトさせるようサポートすること」が期待されています。■TNFD設立の背景世界経済フォーラムによると、自然に対する依存度が中等度または高度に該当する経済活動は、世界の経済の産出量の半分以上(44兆米ドル分の経済価値)にあたると推計されています。自然に依存しているにもかかわらず、経済活動によって自然を損失し続けていることから、2021年6月のG7サミットでは「2030年自然協約」が採択されました。これは「2030年までに自然の損失を反転させ、ネイチャーポジティブにすること(自然を優先すること)」を宣言したもので、自然資本に十分投資することが重要であると認識されました。さらに2021年10月のCOP15(生物多様性条約第15回締約国会議)では「昆明宣言」(中国の南西部、昆明にて開かれた会合)が採択され、2022年上旬に「2030年までに生物多様性を回復の軌道に乗せるために緊急の行動を取ること」などを定めた「ポスト2020生物多様性枠組み」の採択に向けて取り組むことが確認されました。■TNFDの特徴TNFDでは、組織が自然に対してどう行動するかについて、下図の4本柱(①ガバナンス②戦略③リスク管理④指標と目標)で情報を開示をすることを推奨しています。(気候関連の財務情報開示のフレームワークであるTCFDと同様です。 )出典:TNFD「NATURE IN SCOPE」日本語版その他、TNFDの特徴は以下のようなものがあります。TNFDでは、既存の企業報告の中に含めることを想定しており、現状ではTNFDに特化したレポートを作成することは意図していません。自然が企業に及ぼす財務的影響だけでなく、企業が自然に及ぼす影響も網羅 したものになる予定です。(ダブルマテリアリティの考え方を採用。ダブルマテリアリティについてはこちら )TCFDの中にある「移行リスク・物理リスク」に加えて、TNFDではシステミック・リスク(システミック・リスクとは金融用語で、一部のシステムでの機能不全が波及し、金融全体の機能不全を起こすリスクを指しています。同様に、ここでは重要な自然のシステムが、適切に機能しなくなるリスクなどを指します)を考慮することが検討されています。報告主体は、まず自然に対する影響と依存度が最も大きい事業を特定し、重要で十分な質のデータが容易に入手できるものについて優先的に開示を求める予定 となっています。■今後のスケジュールと企業への影響TNFDに関して、今後は以下のように予定されています。2021~2022年:枠組みづくり 2022年:【フェーズ2】枠組みを先進国と新興国の市場でテスト 2023年:【フェーズ3】20カ国の金融規制当局、データ作成者、利用者と協議 【フェーズ4】枠組み正式発表 【フェーズ5】枠組みを普及させるためのガイダンス実施TCFDのようなガイダンスの形でフレームワークが完成するのは2023年となっていますが、すでに影響を評価するツールも用意されています。まずは事業活動がどのように自然と影響しあっているのかの評価を始めてみるのが良いでしょう。【参考】世界経済フォーラム「Nature Risks on the Rise」ポスト 2020 生物多様性枠組1次ドラフトTNFDTNFD「TNFD NATURE IN SCOPE」日本語版