
GRIスタンダードの作成・発行を行うGSSBは2024年1月25日、「GRI101:生物多様性2024」をリリースし、6月21日には日本語版も公開しました。「GRI304:生物多様性2016」の改訂版にあたるもので、2026年1月1日以降に発行するレポートから対応必須となりますが、早期適用も推奨されています。自社ならではの課題特定を前提とした内容となっており、TNFD対応と共通する内容が問われています。
GRIとTNFDはガイダンス開発で相互に協力しています。「GRI101:生物多様性2024」でTNFDの定義や基準を採用したことで、内容面の整合性が取られました。2024年7月30日には、相互利用のためのマッピングも発表されています 。今回リリースされた「GRI101:生物多様性2024」の開示事項は計8項目あり、「項目のマネジメントに関する開示事項」は3項目、「項目別の開示事項」は5項目で構成されています。詳細は下の通りです。
<項目のマネジメントに関する開示事項>
GRI101‐1:生物多様性の損失を止め、反転させるための方針
GRI101‐2:生物多様性へのインパクトの管理
GRI101‐3:アクセスと利益配分
<項目別の開示事項>
GRI101‐4:生物多様性へのインパクトの特定
GRI101‐5:生物多様性へのインパクトを伴う場所
GRI101‐6:生物多様性の損失の直接的な要因
GRI101‐7:生物多様性の状態の変化
GRI101‐8:生態系サービス■サプライチェーン全体を考慮
「GRI101生物多様性2024」では、自社に関係する生物多様性関係の課題を具体的に特定する必要があります。また、その課題特定はサプライチェーン全体を考慮したものであることが明記されました。これは「GRI101-4:生物多様性へのインパクトの特定」で言及されている内容で、組織(企業)は取引関係の結果としてマイナスのインパクトに関与するリスクがあり、自社操業分のみにおける分析では正確な判断ができないからであるとしています。加えて、GRIは「場合によっては組織から何層も離れたサプライヤーに至るまで、生物多様性に対する最も著しいインパクトがサプライチェーンのどこに存在するかを理解できる。」と、この項目事項の開示への期待についても説明しています。なお具体的な手引きとして、TNFDのLEAPアプローチの活用も効果的であるとして推奨されています。
■具体的な場所・範囲の特定
もうひとつのポイントは、インパクトを与えてしまうと特定した場所の範囲について、所在地と面積(ヘクタール)などの詳細を報告する必要があることです。これは「101-5 生物多様性へのインパクトを伴う場所」で言及されている内容で、データがある場合は拠点の名称や座標もあわせて報告することが望ましいとされています。この理由には、生物多様性では、インパクトを与えてしまう場所やその性質により深刻度や問題の解決方法が異なることが挙げられます。
また、生物多様性は環境や地域などと密接に関わるものであることなどから、環境系の他の開示事項を参照および活用しながら報告することが推奨されています。
生物多様性損失の直接要因 | 関連する項番 | 関連する開示事項 |
|---|---|---|
天然資源の開発 | GRI303:水と廃水2018 | ・GRI303-3:取水 |
汚染(大気汚染) | GRI305:大気への排出2016 | ・GRI305-7:窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、およびその他の重大な大気排出物 |
汚染(水質および土壌汚染) | GRI303:水と廃水2018 | ・GRI303-4:排水 |
GRI306:排水および廃棄物2016 | ・GRI306-3:重大な漏出 |
■まずやるべきことは?
「GRI101:生物多様性2024」の対応には、サプライチェーン全体を見渡す「広い視野」と、具体的に範囲を特定して掘り下げる「緻密性」の両方が必要になります。生物多様性だけに閉じない活動整理も必要です。
自社ならではの課題特定のためにはバリューチェーン分析が重要です。課題特定の際にバリューチェーン分析を前提とする場面は増えており、TNFDのLEAPアプローチのほか、EFRAGによるダブルマテリアリティ特定プロセスの序盤でもバリューチェーン分析の工程が登場します。こうした分析や活動の整理には一定の時間を要します。レポートやサイトを作る「開示」の工程だけでなく、社内の「活動」の部分を変えていくことが必要です。早めの着手が有効となり、多くの企業にとってはTNFD対応を進めることが準備の第一歩となりそうです。
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