公開日:2026.05.25

最終更新日:2026.07.09

金融庁が「記述情報の開示の好事例集2025(サステナビリティ情報の開示)」最終版公表。有報以外の媒体への活用方法 

はじめに

2026年3月、金融庁より「記述情報の開示の好事例集2025(サステナビリティ情報の開示)」の最終版(以下「好事例集」)が公表されました。

これは、金融庁で行っていた勉強会の成果をまとめたもので「企業から投資家の投資判断に、より有用な情報が提供されること」を目的としています。

構成は次の通りとなっています。

  • 投資家・アナリスト・有識者が期待する主な開示のポイント 

  • 有価証券報告書のサステナビリティに関する考え方及び取組の開示例

  • 有価証券報告書のコーポレート・ガバナンスの状況等ほかの開示例

本記事では、本事例集の概要、統合報告書やサステナビリティサイトといった任意の開示媒体への活用方法についてご紹介します。

【関連リンク】「記述情報の開示の好事例集2025」の最終版公表:金融庁


「記述情報の開示の好事例集」とは

本事例集公表の目的は、有価証券報告書の記述情報について、既に開示の充実に取り組んでいる企業には、更なる開示の充実を図ってもらい、これから取り組む企業には、開示の底上げに役立ててもらうこととなっており、まだ対応していない企業にとっても有益な内容となっています。

■サステナビリティ分野で紹介されている具体的なテーマ

  • サステナビリティ全般

  • 気候変動

  • 人権

  • 生物・自然

  • 知的財産

  • 人的資本

  • 従業員の状況

■各テーマについて紹介されている事項 

  • 投資家・アナリスト・有識者が期待する主な開示のポイント 

  • 好事例として採り上げた企業の主な取組

  • 具体的な有価証券報告書の該当箇所

大企業の事例が中心ではあるものの、中堅中小上場企業(直近決算期における売上高が300億円以下の企業)の事例も収録されています。

有価証券報告書の該当箇所については、この事例が「コア・コンテンツ」(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標及び目標)のいずれに該当するのかや、「好事例として着目したポイント」とその該当箇所も紹介されています。

記述情報の開示の好事例集 2025 (株式会社リコー p26)

記述情報の開示の好事例集 2025 (p26)

任意媒体への活用方法

統合報告書やサステナビリティサイトなどの任意の開示媒体と有価証券報告書の位置付けについて、投資家等からは

  • 有報では、サステナビリティ開示基準(SSBJ基準など)に準拠して投資家の意思決定に必要な要点を集約し、詳細な情報は統合報告書等の任意媒体へ誘導するといった、重複回避と深掘りを両立させる工夫が投資家等から期待されています。

  • 有報から任意報告書への参照を行うことで、定量情報とあわせて背景・意図などの定性情報を効果的に伝える手法が紹介されています。

とのコメントがあります。

・投資家等の評価ポイントを読み解き、求められるレベル感を把握する

好事例集の中で統合報告書など投資家等に向けた媒体に活かしていただきたい部分は、「投資家が評価したポイント」にあります。 

例えば「ガバナンス」については、「サステナビリティ推進部を設置し、適時取締役会に報告しています。」といった記載に留まる企業が多くみられます。

一方で好事例として紹介されている企業は、

  • 「監督体制」と「執行体制」を分けて記載し、それぞれの実行方法も記載されている

  • 具体的な頻度や回数などが記載されている

といった点が評価されており、ここまでの記載が期待されていることがわかります。

また「指標と目標」では、単年度の数値を開示するだけでなく、好事例では

  • 目標及び実績を、時系列での変化がわかるように記載。

  • 指標ごとに、グループ又は単体のどの範囲の数値かについて記載。 

という点が評価されています。

このような評価されているポイントを参考にすることで、自社の開示情報を改善していくことができます。

・サステナビリティ情報開示媒体を整理するヒントを得る

本事例集には、有価証券報告書をはじめとするサステナビリティ情報開示媒体の企業担当者のコメントも含まれています。有報と任意開示媒体の役割分担や情報の連携に関して、下記のようなコメントがあり、自社の任意媒体のあり方を検討・改善するためのヒントとして活用できます。

  • 各報告書の位置づけとして、有報は日本における法定開示(SSBJ)、統合報告書は投資家に対する企業価値向上戦略の発信、サステナビリティレポートは国際的なESG基準(SSBJ+TCFD・TNFD・CSDDD)対応、 ESGデータブックは外部評価機関や投資家向けの参照データ集として整理している。

  •  有報内で他の記載個所を参照することで重複を避けるとともに、任意報告書への参照も行うことで、定量情報とあわせて背景・意図といった定性情報を投資家に伝える工夫を行った。

  • 任意開示であるサステナビリティレポートではダブルマテリアリティでの開示を行うことで多様なステークホルダーへの期待を反映した 。


今後に向けて

企業のサステナビリティ情報開示媒体は、SSBJ基準がいつ頃適用されるかどうかによって異なってきます。

・SSBJ基準の適用時期が決定している企業

適用時期が決まっている企業では、有価証券報告書は「サステナビリティ開示の重要な媒体」となっていきます。

有価証券報告書で開示すべきなのは、財務面での重要な項目に関するコア・コンテンツ(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)になるため、その内容を踏まえて他の媒体(統合報告書やサステナビリティサイト)の活用方法を改めて検討することが重要です。

各媒体の役割を明確にすることで、情報の重複を避け、連携した情報開示が可能となります。

・対応時期が未定の上場企業や非上場企業

適用状況が明らかでないからこそ、「何をどの媒体でどこまで開示すべきか」には悩まれると思います。好事例集には「SSBJ基準への準拠が求められていない企業においても、有価証券報告書において、SSBJ基準の要求事項を踏まえた開示を行うことは有用。」とあり、適用時期が決まっている企業と同様の開示が期待されています。

そのため企業は自社が開示すべき情報を自分たちで特定し、それを「どの媒体で、どう開示するか」を決定しなければなりません。統合報告書なのかサステナビリティサイトやレポートなのか、どの程度SSBJ基準に対応するのか。

それらを決定したうえで、各媒体の本来の役割を損なわないように編集し、開示していくことが大切です。


【関連リンク】

「記述情報の開示の好事例集2025」の最終版公表:金融庁


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