「サステナブル・ブランド国際会議2025」が3月18日〜19日に行われました。サステナビリティにおけるイノベーションを起こすプラットフォーム創出を目指し、2017年から続くイベントです。サステナビリティ・コミュニケートもメディアパートナーとして参加しました。会場ではネットワーキングのほか、企業の先進事例を紹介するセッションもあり、担当者の苦労や解決のヒントなどをシェアしていました。いくつかのセッションをレポートします。■水素をつかう未来を語ろう!水素技術が各種実証実験を終えて導入の一歩手前まで来ていることを、本田技研工業と川崎重工業の事例とともに紹介するセッションでした。カーボンニュートラルの達成のためにはエネルギー転換が必須となりますが、画一的な対応ではなく、地域ごとの特性や個々のニーズを考慮することが重要です。というのも、再生可能エネルギーだけでは対応しきれない、高出力と機動力が求められる場面があるからです。そうした場面では、水素技術の強みが生かされます。EV車では充電に時間がかかることが課題となる場合があり、水素はその解決策の一つとなり得ます。自家用車と違って稼働率の高い商用車両だと、瞬時に対応できる水素の強みが発揮されるとのことです。また、災害時の商業施設で使う定置電源などを想定すると、バッテリー式の電源では需要をまかなえないことが考えられます。こんな時、高出力で瞬時に対応できる水素技術が有効です。水素技術のバリューチェーンは、つくる・ためる・はこぶ・つかうの4工程でよく表現されます。ただし「現状はバリューチェーンのチェーンがまだ切れている状態」と登壇者の長谷部氏(本田技研工業)。各工程の技術はすでに安全な使い方が確立されていますが、水素技術を前提にした産業構造の構築は1社だけでは到底叶いません。企業ごとの立場を調整して、それぞれのチェーンをつないでいく作業が必要とのことでした。■真に実効性のある人権デュー・ディリジェンス事業会社としてイオンと花王、サプライチェーン監査の団体としてamforiの紹介がありました。イオングループは2003年から人権デュー・ディリジェンスに着手し、今では3か月に1度人権デュー・ディリジェンス委員会でモニタリングする体制を構築。活動当初はトップバリュ製造委託先のみを対象としていましたが今ではグループ取引先にまで拡大しています。花王は自社バリューチェーンの中でも特に「原材料調達先の生産者や農家」「サプライチェーン上の外国人労働者」を高リスクと評価し、2022年からは外国人労働者へのインタビューを開始。登壇者の相澤氏(花王)によれば「リスク診断だけでなくステークホルダーの声を直接聞く仕組みを意識している」とのこと。「早く声を上げてもらって早く対応する」を意識して実行しているそうです。とはいえ、1社だけがグリーバンスメカニズム(苦情処理メカニズム)を実施してもサプライチェーン全体は良くならないとも話していました。実効性を高める手段については、「手探り状態」と津末氏(イオングループ)。リスク度合いに合わせて外部監査・2者監査・1者監査を選択する仕組みですが、2者監査(社内監査)のためのメンバー教育や各国法令のキャッチアップも課題となります。ジョイス・チャウ氏(amfori)は「監査が補完ツールとしての重要な役割を果たす」と説きます。監査基準が一つの共通言語となるからです。チャウ氏は「人権リスク特定は健康診断のようなもので、課題が発覚したらいけないのではなくよりよくしていくための観点としてとらえるべき」と話しました。先進企業の成功の秘訣を知るべくセッションに参加しましたが、目の前の課題一つひとつに向き合って積み上げていった結果だということがよくわかりました。水素技術の分野もこの20年の研究によってめざましい成果を上げています。また、水素技術と人権デュー・ディリジェンスという一見離れた分野なのに、1社だけの努力では実現しないことを話されていたのが印象的でした。【関連記事】サステナブル・ブランド国際会議2025東京・丸の内に出展します【無料セミナー】サステナビリティ推進部は なぜ「マーケティング本部」に位置づけられたか ~その狙いと効果~