企業の価値創造ストーリーを伝えるツールである統合報告書にROICを掲載する事例が見られるようになりました。ROICとは、「Return On Invested Capital」の略称で「投下資本利益率」のことで、企業やグループ全体だけでなく、「事業ごとに、どれだけの資本を投下して、どれだけ利益をあげたのか」を示すことができます。価値協創ガイドラインの「4.4.1事業売却・撤退戦略を含む事業ポートフォリオマネジメント」には「長期的な投資を行う上で、戦略が着実に実行されることに加え、事業の売却も含むM&Aや事業からの撤退戦略も含む事業ポートフォリオマネジメントの考え方が示されることは重要である。」とあります。このような投資家のニーズに対応するために、ROICを活用する企業があります。今回は統合報告書にROICツリーを掲載している事例をご紹介します。掲載事例オムロン「統合レポート2023」複数の事業を展開しているオムロンにとって、ROICは「各事業を公平に評価するための最適な指標」となっており、CFOを責任者とする「ROIC経営」を実践しています。「ROIC・ESG逆ツリー展開」では、ROICの要素を分解し部門のKPIレベルにまで掘り下げています。 こうすることで担当者の目標とROICの関連性が明らかになり、各自が目標達成に取り組むことがROICの向上につながっていくということが腑に落ちるため、自分事として捉えることができるようになっています。【参考】オムロン株式会社日立製作所「統合報告書2023」(財務戦略ページ)日立製作所は「事業に投資した資金に対して、どれだけの利益を生み出せたのか」を示すために2019年にROICを導入しました。「ROICツリー」を使って、ROICの向上につながるドライバーを「収益性の向上」と「資産効率性の向上」の2つに分類し、それぞれのドライバーにはどのようなアクションが貢献するのかを示しています。【参考】株式会社日立製作所ROICツリーを統合報告書に掲載することで、「企業がなぜその事業に投資しているのか」をわかりやすく伝えることできます。また、部門の目標との関連性を示すことで経営目標と各自の活動のつながりをわかりやすく伝えるツールともなっているようです。【関連記事一覧】統合報告書を初めて作る方へ統合報告書で企業価値を最大化する:作成ガイドとおさえるべきポイント・最新情報統合報告に必要な、6つの統合思考原則国際統合報告フレームワークの改定ポイント統合報告書を作成するメリット価値協創ガイダンス2.0WICIジャパン統合リポート・アウォード【最新2024年版】統合報告書・サステナビリティレポートでのコア・コンテンツ事例