2017年のG7では「海洋プラスチック憲章」が提案され、日本とアメリカを除くカナダ、フランス、ドイツ、イタリア、英国の4か国とEUがコミットしました。日本はこれまでも、「循環型社会形成推進基本法に規定する基本原則※」を踏まえ取り組んできました。プラスチックの3Rや適正処理を率先して進め、排出量を削減し、廃プラスチックのリサイクル率と熱回収率を合せると85.8%の有効利用率を達成し、プラスチックの海洋流出を抑えてきました。しかし、G7の「海洋プラスチック憲章」に対しては、「法律が整備されていない」などの理由からコミットしませんでした。しかしながら、日本は2018年6月に閣議決定された「第四次循環型社会形成推進基本計画」に基づき、2019年6月に大阪で開催されるG20までに「プラスチック資源循環戦略」を策定する方向です。この「プラスチック資源循環戦略」には、海洋プラスチック憲章と同様に期限付きの定量的な目標も含まれる予定になっているそうです。では、このG7の「海洋プラスチック憲章」と日本の「プラスチック資源循環戦略」の違いについて、詳細を見て行きましょう。 G7 「海洋プラスチック憲章」日本「プラスチック資源循環戦略(案)」リサイクル推進2030年までに100%のプラスチックが再使用・リサイクル可能、または実行可能な代替品が存在しない場合には、熱回収可能となるよう産業界と協力する2035年までに、全ての使用済みプラスチックをリユースまたはリサイクル、それが技術的経済的観点等から難しい場合には熱回収も含めて100%有効利用するよう、国民各界各層との連携協働により実現を目指す再生利用促進適用可能な場合には2030年までにプラスチック製品においてリサイクル素材の使用を少なくとも50%増加させるべく産業界と協力する2030年までに、プラスチックの再生利用(再生素材の利用)を倍増するよう目指すマイクロビーズ管理可能な限り2020年までに洗い流しの化粧品やパーソナル・ケア消費財に含まれるプラスチック製マイクロビーズの使用を削減するよう産業界と協力する2020年までに洗い流しのスクラブ製品に含まれるマイクロビーズの削減を徹底するなど、マイクロプラスチックの海洋への流出を抑制する包装材管理2030年までにプラスチック包装の最低55%をリサイクルまたは再使用し、2040年までには全てのプラスチックを100%熱回収するよう産業界及び政府のほかのレベルと協力する2030年までに、プラスチック製容器包装の6割をリユースまたはリサイクルするよう、国民各界各層との連携協働により実現を目指す主な定量目標の比較(各種資料よりYUIDEA作成)他にも日本の「プラスチック資源循環戦略」には、以下のような目標が含まれています。2030年までにワンウェイのプラスチック(容器包装等)をこれまでの努力も含め累積で25%排出抑制するよう目指します2025年までに、プラスチック製容器包装・製品のデザインを、容器包装・製品の機能を確保することとの両立を図りつつ、技術的に分別容易かつリユース可能又はリサイクル可能なものとすることを目指します2030年までに、バイオプラスチックを最大限(約200万トン)導入するよう目指しますこう比較すると、日本はG7の「海洋プラスチック憲章」にコミットをしないまでも、策定を進める「プラスチック資源循環戦略」の主要な施策について、ほぼ同様の目標を掲げていることが分かります。インドやイギリスなどではプラスチックを規制する法律ができ、グローバル企業も自主的な削減を進めています。G20に向けて日本政府の姿勢が注目される中、日本の企業はプラスチック資源に関して問われることになるでしょう。※循環型社会形成推進基本法に規定する基本原則一 循環資源の全部又は一部のうち、再使用をすることができるものについては、再使用がされなければならない。二 循環資源の全部又は一部のうち、前号の規定による再使用がされないものであって再生利用をすることができるものについては、再生利用がされなければならない。三 循環資源の全部又は一部のうち、第一号の規定による再使用及び前号の規定による再生利用がされないものであって熱回収をすることができるものについては、熱回収がされなければならない。四 循環資源の全部又は一部のうち、前三号の規定による循環的な利用が行われないものについては、処分されなければならない。【参考】プラスチック資源循環戦略(案)海洋プラスチック憲章 プラスチックを取り巻く国内外の状況<参考資料集>P35環境省プラスチック資源循環戦略小委員会