これまで多くの日本企業は、サステナビリティ情報のマテリアリティ特定に「GRIスタンダード」を活用してきました。2024年3月に、SSBJによってサステナビリティ開示基準(案)が公表されたことで、今後プライム上場企業はファイナンシャルマテリアリティも考慮することになります。この記事ではSSBJ基準とGRIスタンダードを踏まえた、次回のマテリアリティの見直しに必要なステップをご紹介します。サステナビリティ開示基準での記載ポイントSSBJユニバーサル基準公開草案GRIスタンダード種類ファイナンシャルマテリアリティインパクトマテリアリティ再評価・見直し重要であるかどうか毎年再評価が必要だが、トピックの入れ替えは、事業環境の変更などがあったときなどに検討するべき毎年、マテリアルな項目を再検討するのが望ましいとしている。マテリアリティ特定のステップ・具体的な特定ステップは示されていない特定ステップとして、下記を記載している。 1.当該組織の背景状況の把握 2.顕在化したインパクト・潜在的なインパクトの特定、 3.インパクトの著しさの評価 4.報告するための最も著しいインパクトの優先順位付けSSBJ(IFRS)とGRIの関連開示すべき対象は、SSBJはファイナンシャルマテリアリティ、GRIはインパクトマテリアリティを重視していますが、どちらも毎年の再評価(見直し)が必要としています。2024年5月には、GRIとSSBJの元となる基準を開発しているIFRSとの協力が公表されてており、IFRSも「開示すべき情報はファイナンシャルマテリアリティだが、企業としてはインパクトマテリアリティが重要である」としており、ダブルマテリアリティの重要性を強調しています。またSSBJでも 投資家等の意思決定に不要な情報を除くことができれば「GRIスタンダード」を参照することが、企業の負担を軽減させるのに役立つ可能性がある。(ユニバーサル基準、BC89・90より)と、GRIスタンダードの有用性を認めています。注意点簡単に言うと、GRIベースのインパクトマテリアリティに、ファイナンシャルマテリアリティの要素を加えることで、SSBJ(IFRS)に概ね対応できると考えられます。GRIでは優先順位付けの前に詳細なインパクト分析を行うことが求められています。このプロセスでは、バリューチェーン分析やステークホルダーエンゲージメントを通じて、インパクトの著しさを特定し、そのうえで自社が取り組むべき課題を判断します。欧州の開示基準であるESRSでも、インパクト分析を行った上でファイナンシャルマテリアリティの特定を行うべきとしています。日本企業でも事業規模によってはESRSへの対応が必要となる場合があり、GRIベースの特定方法は非常に役立ちます。ただし、企業の開示事例を調査すると、GRIが提示するプロセスを省略しているケースも見受けられます。そのため、インパクト分析や根拠資料の所在など、どのようにマテリアリティを特定したのかを、改めて振り返ることが重要です。今後のマテリアリティ見直しに向けて多くの日本企業には、SSBJ基準とGRIスタンダードの両方に対応することが求められます。そのため、次回のマテリアリティ見直しではGRIとSSBJの要求事項を統合しつつ、財務的影響とサステナビリティインパクトの双方を考慮することがお勧めです。関連記事・SSBJとは・ダブルマテリアリティ特定支援