国連環境計画(UNEP)は12月5日、自然を軸としたソリューション(NbS)が、脆弱な地域や紛争の影響を受ける地域における平和構築や紛争解決に貢献できる道筋を分析した各国政府向けの報告書を発行した。今回の報告書は、NbSとして、森林再生・植林、湿地帯再生、グリーンインフラ、珊瑚礁再生 生息地保護、水辺の緩衝地帯、気候変動に対応した農業、天然海岸の防御、生物多様性の回廊、雨水利用を一般的な例として挙げた。また、「気候安全保障」の概念を紹介。気候変動が暴力紛争リスクにどのような影響を与えるかを指すもので、初期の研究では、気温の上昇と紛争リスクとの直接的な因果関係に焦点を当てられていたが、今日の研究の大部分は、気候変動が既存の紛争リスクの「乗数」として安全保障リスクを間接的に助長させる作用があることが指摘されている。さらに最近の研究では、気候変動だけでなく、汚染と生物多様性喪失を含めた人為的な環境変化と安全保障の関係や、人道支援と開発協力の双方のアクターが、いかに暴力紛争リスクの軽減に貢献できるかにも関心が集まってきているという。実際に、国連安全保障理事会でも、気候安全保障リスクのアジェンダも同理事会のテーマとすることに対する決議が模索されている。2021年の採決では、ロシア、インドが反対、中国が棄権したが、他の12カ国は賛成票を投じている。また、国連平和維持・政治ミッションでも、合計12件で、職務権限に気候変動インパクトに関する言及を盛り込んでいる。同報告書では、40のケーススタディを紹介。さらに実践されてきたプロジェクトからの知見として、新たな生計手段を支援していくことや、不平等への対処、非自発的移住への対処、政府との協働、国境を超えた複数国での対策、参画型プロジェクトの重要性を挙げた。その上で、政府に対し、環境・気候政策と安全保障政策を一体的に検討していくことや、NbSへの財政投下、環境正義の概念の拡大、平和構築でのNbSの活用、平和構築でのNbSプロジェクトでの女性の役割の強化等を提示した。【参照ページ】Nature-based Solutions for Peace: Emerging Practice and Options for Policymakers株式会社ニューラル サステナビリティ研究所 [原文はこちら]2024/12/12Sustainable JapanSustainable JapanのホームページFacebook