「SFDR」とは、金融機関に対して、持続可能性に関する情報開示を求める規則 で、欧州委員会により導入されました。「The Sustainable Finance Disclosure Regulation」(EU Regulation on Sustainability related Disclosures in the Financial services sector)の省略です。EUタクソノミーの概念に基づく規則で、2019年に採択され、2021年3月から部分的に適用されています。本記事では、サステナビリティに関連する改訂部分についてご紹介します。EUでは、2018年に欧州委員会によって10の「アクションプラン:持続可能な成長に向けた金融」が公表されていました。そのアクションの1つには「機関投資家の開示義務の明確化」があり、これを具体化した施策の1つが、今回のSFDRにあたります。EUタクソノミーについてはこちらこちら真の環境企業を可視化する「EUタクソノミー」。簡単解説目的この規則では、金融市場の参加者と金融アドバイザーに向けて、以下のような情報の開示することを定めています。持続可能性リスクの統合プロセスにおける持続可能性への悪影響の考慮金融商品に関する持続可能性関連情報の提供上記のような情報開示によって、ESGやサステナビリティをテーマとした金融商品において、実際にどういった課題に貢献するのかが不明確な「ウォッシュ」を防ぐこと、また金融商品のサステナビリティ面を比較可能にすることが期待されています。対象EUの規則であるため、その対象はEUの金融市場参加者(投資商品を扱う資産運用会社・保険会社・投資会社など)や、機関投資家などに助言を行う機関です。日本の企業は直接の対象ではありませんが、EUの金融機関から運用の再委託を受けるような場合には、同様の情報開示が求められる可能性があります。内容SFDRは20の条項から構成されており、下記のような条項があります。第1条 主題Subject matter第2条 定義Definitions第3条 サステナビリティリスク方針の開示Transparency of sustainability risk policies第4条 事業体レベルでの持続可能性への悪影響の開示Transparency of adverse sustainability impacts at entity level第5条 サステナビリティリスクの統合に関する報酬方針の開示Transparency of remuneration policies in relation to the integration of sustainability risks第6条 持続可能性リスクの統合の透明性Transparency of the integration of sustainability risks第7条 金融商品レベルの持続可能性への悪影響の開示Transparency of adverse sustainability impacts at financial product level第8条 環境または社会的側面の促進に関する契約前の開示Transparency of the promotion of environmental or social characteristics in pre‐contractual disclosures第9条持続可能な投資の促進に関する契約前の開示Transparency of sustainable investments in pre‐contractual disclosures第10条 環境または社会的および持続可能な投資の促進に関するウェブサイトでの開示Transparency of the promotion of environmental or social characteristics and of sustainable investments on websites第11条 環境または社会的および持続可能な投資の促進に関する定期報告での開示Transparency of the promotion of environmental or social characteristics and of sustainable investments in periodic reports第12条 ディスクロージャーの見直しReview of disclosures第13条 マーケティング・コミュニケーションMarketing communications第14条 管轄官庁Competent authorities第15条 EU職域年金基金および保険仲介業者の開示Transparency by IORPs and insurance intermediaries第16条 規制(EC)No.883/2004および(EC)No.987/2009の対象となる年金商品Pension products covered by Regulations (EC) No 883/2004 and (EC) No 987/2009第17条 除外事項Exemptions第18条 報告書Report第19条 評価Evaluation第20条 発効および適用Entry into force and application「EU規則_SFDR」よりYUIDEA作成第3〜5条は運用機関などの会社全体に関する項目、そして第6〜11条は金融商品に関わる項目です。 会社全体としてのサステナビリティリスクに関する方針だけでなく、金融商品ごとに環境・社会に関する情報開示が求められています。また金融商品を下記の3つに分類し、それぞれ必要な情報を開示することになっています。第6条:第8条、第9条に該当しないESG特性を促進しない商品第8条:環境または社会的または両方を促進する商品(ライト・グリーンとも言われる)第9条:サステナブル投資を目的とする商品(ダーク・グリーン※とも言われる)例えば第8条に該当する商品では、投資プロセスにおいて財務的な基準だけでなく、環境や社会をどのように考慮しているかといった情報の開示が求められています。※持続可能性への貢献深度をイメージし、第8条、第9条はそれぞれにライト・グリーン、ダーク・グリーンと色分けがされています。ダーク・グリーンの商品区分は、より厳密に社会的効果を数値開示することなどが求められています。金融機関等の対応サステナブル投資がメガトレンド化する中で、今回のSFDR導入は必然とも言えるでしょう。フランスに本社を置くBNPパリバは、サステナビリティレポートの中で自社の金融商品の分類を開示しています。出典:BNPパリバ サステナビリティレポート2023【参考リンク】SFDR(EU)Final Report on draft Regulatory Technical Standards (EU)