2024年夏、世界が熱狂したイベントの一つ、パリ2024オリンピック・パラリンピック。夏季大会史上初めてスタジアムの外で行われた、セーヌ川やコンコルド広場・シャンゼリゼ通りが舞台となった開会式は多くの注目を集め、盛会のうちに幕を閉じた。今回の大会では、気候変動に配慮した大会運営が目指され、過去のロンドン大会と比較しカーボンフットプリントを50%にするという目標が掲げられた。大会期間中には会場施設の95%を既存または仮設施設でまかなうことや、食品に使用される使い捨てプラスチックを37%削減することなど、五輪大会としては真新しい目標を設定していた。しかしその取り組みは大会期間中だけにとどまらない。今大会で使用された600万個にのぼる備品や競技会場は、廃棄ではない処理方法が取り決められている。大会組織委員会によると、開幕前にはすでに今大会で使用される備品や競技会場の90%はオリンピック・パラリンピックの閉幕後の再利用が決められていた。例えばエッフェル塔前に設置されたビーチボールコートの砂は、パリ地区にあるスポーツクラブで再利用されることが決まっている。同じくテニスボールなどのスポーツ用具はフランスのスポーツクラブに寄贈される予定だ。選手村のベッドに使用された再生プラスチック製の1万4,000枚以上のマットレスはフランス軍に寄贈され、段ボール製のベッドフレームはリサイクルされる。また、大会期間中に使用されたテーブルや椅子などのオフィス家具は、提供元である事務用品サプライヤーのリレコ(Lyreco)が回収し、新たに立ち上げる中古家具販売ビジネスの製品として販売を行う。さらには、競技プール、スポーツクライミングの壁とスケートボード場は移民が多く暮らすパリ北東のセーヌ・サン・ドニ郊外に移設され、同地区の住民に向けてスポーツを行う機会提供のために活用される。上記に加えて、組織委員会はオリンピック・パラリンピック史上初めて、大会で使用した備品の一般販売を行う。2024年9月から10月にかけてフランス各地で開催される蚤の市では、ユニフォームや旗、会場装飾から選手が使用したタオルに至るまで、様々な物品の購入が可能となり、ファンやコレクターにとってはまたとない機会である。気候変動に配慮した大会運営を目指している今回のパリ2024オリンピック・パラリンピック。大会組織委員会は、大会期間中の移動や廃棄物処理のみならず、開催後の備品や競技会場の処理に紐づく環境影響評価も考慮し計画を策定してきた。一方で、蓋を開けてみると大会後に課題が残った取り組みもある。ごみの削減に向けて、選手村や会場周辺ではソーダファウンテンが設置され、返却・再利用可能なプラスチックカップが配布されたという。しかし、機械を設置できない場所では約620万本のペットボトルからカップに注ぐ形で飲み物が提供されていたとして、グリーンウォッシュであるとの批判を受けている(※1)。また、今大会ではエアコンに代わる冷却装置を使用することが取り決められており、当初は選手村にエアコンを使用せず地下水を利用した冷却システムを設置していたが、近年の猛暑の影響で開幕前には2,500台のエアコンを設置することとなった(※2)。世界的なスポーツの祭典であるオリンピック・パラリンピックの開催に際して、特に環境への影響については、気候変動が深刻化する昨今避けては通れない課題となっている。持続可能な大会の促進を掲げるオリンピック・アジェンダ2020採択以降、国際オリンピック委員会の理念はオリンピックが開催国の状況や環境に適応すべきであるとしている。今大会の規定の範囲で行われた施策は確かに課題も残ったが、パリおよびフランス全体の状況を考慮した上で行われた様々な取り組みは、開催国と大会組織委員会の努力とアイデアが詰まっていると言えるのではないだろうか。パリ大会の取り組みとその反省点が次回以降どのように活かされるのか、注目していきたい。※1 Greenwash Games? French public points finger at Coca-Cola over Olympics plastic waste※2 AC-free ambition for Paris Olympics melts away as organisers order 2,500 cooling units【参照サイト】What will happen to 6 million items from the Paris Olympic Games?|The Mayor.EUEnvironmental Benefits of Hosting the Olympic Games|International Olympic CommitteeOlympics equipment heads for ‘second life’ post-Games|The Business TimesGreenwash Games? French public points finger at Coca-Cola over Olympics plastic waste|The GuardianAC-free ambition for Paris Olympics melts away as organisers order 2,500 cooling units|France 24Rentals, donations,sales… Paris 2024 plans for second life of Games equipment | Paris 2024PARIS 2024 SUSTAINABILITY & LEGACY PRE-GAMES REPORT 2024/9/10IDEAS FOR GOOD[原文はこちら]IDEAS FOR GOOD は社会を「もっと」よくするアイデアを集めたウェブメディアです。最先端のテクノロジーから、思わず「なるほど!」と言いたくなる秀逸なデザインや広告、政府の大胆な取り組みにいたるまで、世界中に散らばる素敵なアイデアをお届けします。