日本経済新聞社は2023年2月21日、第2回「日経統合報告書アワード」の受賞企業を発表した。同アワードは積極的に情報開示をする企業を表彰するもので、2021年に「日経アニュアルリポートアウォード」から改称されて以来2度目の開催となった。前回の290社・団体を上回る387社・団体が参加し、グランプリに3社、準グランプリに6社、特別賞としてグランプリE賞、グランプリS賞、グランプリG賞、新人賞、審査員特別賞にそれぞれ1社、優秀賞に41社が選ばれた。受賞企業一覧今年度の審査では、機関投資家、学識経験者など400人以上が携わった。1次審査では1社の統合報告書につき、5人の審査員が審査基準に沿って採点し、コメント。得点上位作品を対象とした2次審査で、 審査委員会で受賞企業を決定した。受賞企業は下記の通り(講評文面は公式サイトより引用)グランプリ・伊藤忠商事統合レポート2022トップの意思が具体的に伝わる経営トップの強い意思が報告書全体と整合し、具体的かつシンプル。マテリアリティ抽出も秀逸な価値創造モデルと一致し的確。バランスのとれた財務政策、時系列目標明示のTCFD開示、女性の活躍など明確な人材戦略、透明性高い子会社ガバナンス開示も素晴らしい。・オムロン統合レポート2022完成度が極めて高い統合報告目指す姿が明確に示され、社会価値と企業価値の両立を目指す意欲が伝わる。完成度が極めて高い。投下資本利益率(ROIC)の逆ツリー展開による管理手法はユニークかつ秀逸で、ビジネスモデル変革への取り組みがよく分かる。人的資本の記載やTCFD開示も充実。・レゾナック・ホールディングス(昭和電工と昭和電工マテリアルズの統合によって設立。受賞したのは旧昭和電工のレポート)SHOWA DENKO Report2022経営変革と熱意がよく伝わる企業統合の渦中で出された統合報告でありながら、グランプリに値する最良のリポート。経営変革を進める新CEOのメッセージの具体性と熱意、選任プロセスの開示は秀逸。「共創型化学会社」として社会を変える人材創出を目指す企業姿勢が投資家によく伝わる。グランプリE賞・日本航空JAL REPORT 2022環境改善のプロセス記述が充実パーパスや理念がJALらしい。中期計画に沿った価値創造プロセスが秀逸であり、ESGとの関係づけを定量的な時系列目標とともに上手に表現している。特に環境改善のための具体的プロセスが充実し、2050年のネットゼロに向けたロードマップからも熱意を感じる。グランプリS賞・住友金属鉱山統合報告書2022人権方針と取り組みを高く評価ESG項目のKPI設定について抽出プロセスを含めて詳細な説明があり、企業価値創造との関連性も適切。特に人権についてグループ方針を定義し、「先住民の権利」をマテリアリティに設定している点は興味深い。サプライチェーンを含めた改善の取り組みも高く評価。グランプリG賞・日立製作所日立 統合報告書 2022現状と課題が立体的に理解できるESGのすべてにおいてトップレベルであり、他社比較で突出している点で当賞に選ばれた。ガバナンスの記載は充実しているだけでなく、その内容は現状と課題が立体的に理解できるもので他社の参考になる。必要スキルを持つ取締役の人数を記載しているのも斬新。準グランプリ・塩野義製薬統合報告書 2022人的資本戦略室の設置は先進的マテリアリティが事業価値創造との関係で過不足なくリストアップされている。ESG項目についての記述も適切なKPIが提示されている。新型コロナウイルス感染症についての特集記事はタイムリーであり読者の参考になる。人的資本戦略室の設置は先進的で好印象。・J.フロント リテイリング統合報告書 2022覚悟を感じるトップメッセージコロナ禍の影響を大きく受けた中で、新たな成長にむけた具体的な戦略を経営トップが自らの言葉で語っており覚悟を感じる。事業ポートフォリオの見直しに向け、各事業に求めるROICと加重平均資本コスト(WACC)目標を明示しており、資本効率上昇を期待させる。・東京応化工業統合レポート2021ナラティブがほぼ完璧な報告書「社会の期待に科学で応える」というパーパスドリブン、ニッチトップの追求、長期的研究開発の企業風土がビジネスに直結し結果を出していることが分かる、ナラティブがほぼ完璧な統合報告。社長肝いりの従業員エンゲージメント向上の取り組みも好印象を与える。・東京海上ホールディングス統合レポート2022説得力あるパーパスストーリー熱意のこもったトップメッセージ、リスクと機会、企業価値向上と社会課題への貢献の記述はバランスがよく、「お客様と地域社会の“いざ”を支える」というパーパスストーリーには納得感がある。価値創造モデルは独自性があり、100年後まで見据えたスケールは見事。・T I S統合報告書 2022随所に読者理解を助ける工夫全体を通じて読者の理解を助ける工夫が随所にあり、分かりやすい。財務情報の開示は質・量とも十分であり、経営資源の分析が的確。資本戦略についての開示もレベルが高い。環境課題や人材戦略の情報も豊富に開示しており、ステークホルダーの理解を助ける。・村田製作所Murata value report 2022心に残る優れた内容の報告書地に足をつけて将来を描いている優れた内容の統合報告書。一読して技術にこだわる当社のカルチャーが理解でき、心に残る。投資戦略や資本配分の明確な開示は、投資家にとって極めて有用。ESG関連の記述も充実しており、細部まで深く考えられていることが伝わる。新人賞・ニッスイニッスイグループ統合報告書2022シンプルで伝わりやすい報告書構成がシンプルかつ分かりやすく、企業価値向上への熱意が投資家に伝わりやすく仕上がっている。社名を変更してポートフォリオ改革に本気で取り組んでいこうとする姿勢が見える内容となっている。※新人賞は、上位企業の中より、本賞への初参加の企業を選出審査員特別賞・商船三井MOLレポート2022改善努力の継続を高く評価事業環境、全社戦略の説明が分かりやすい。会長と社外取締役との対話を通じて、不断のガバナンス改革を加速させてきたページが充実しており、説得力がある。※第1回アニュアルリポートアウォードから25回目の本年、継続的に参加し、たゆまぬ改善の姿勢を評価し、審査員特別賞を新設優秀賞(以下URL省略)アサヒグループホールディングスアステラス製薬伊藤園ANAホールディングスエヌ・ティ・ティ・データMS&ADインシュアランス グループ ホールディングスオリックスカプコンゴールドウイン小松製作所コンコルディア・フィナンシャルグループシスメックス積水化学工業双日ソフトバンクSOMPOホールディングス第一三共大和証券グループ本社大和ハウス工業TDKデンソー東レ豊田通商南海電気鉄道ニチレイ日清オイリオグループNIPPON EXPRESSホールディングス日本碍子日本特殊陶業野村総合研究所阪急阪神ホールディングス不二製油グループ本社三井住友トラスト・ホールディングス三井物産三菱ケミカルグループ三菱地所三菱商事三菱UFJフィナンシャル・グループミネベアミツミリコーりそなホールディングス