旅の醍醐味のひとつは、自分の暮らす環境とは異なる文化体験ができるところだろう。夏は爽やかな気候で過ごしやすいことから、多くの観光客が訪れる北欧でも、その土地ならではの体験が用意されている。しかしその結果、北欧の一部の都市も夏の間はオーバーツーリズムに悩んでいるのが現状だ。デンマークの首都・コペンハーゲンは、政府の統計によると、2023年の夏は1,200万人以上の滞在が記録された。都市の人口約66万人に対して、20倍近い人が訪れているのだ。今年の夏も多くの旅行客が見込まれるだろうコペンハーゲンでは、観光客を主な対象にして、環境に配慮した行動・体験を積極的に促す革新的な新プログラム「CopenPay(コペン・ペイ)」を試験的にスタートさせた。2024年7月15日から8月11日までの間に実施されるCopenPayのプログラムは、観光客がごみ拾いや、公共交通機関および自転車の利用、都市農園で短時間のボランティア活動などをすると、さまざまな特典を獲得できるという仕組みだ。これらの活動を介して取得したCopenPayを使うと、公共交通機関やガイド付き博物館・美術館ツアー、カヤックのレンタル、地元菜園で収穫された野菜を使ったベジタリアンランチとコーヒー1杯などが無料になるという。システムはいたってシンプルだ。CopenPayに参加した観光客は、電車の切符を見せたり、環境に配慮した行動を証明するものを提示するだけで、特典を受け取ることができる。このプログラムは主に観光客向けだが、住民も参加できるようになっている。Visit Copenhagenのウェブサイトには、このプログラムで利用できるレストラン、サービス、アトラクションがすべてピン留めされた地図が掲載されており、そこには獲得できる特典も記載されている。コペンハーゲン政府観光庁CEOであるミケル・アーロ・ハンセン氏は、同庁のウェブサイトWonderful CopenhagenでCopenPayについてこのように話している。「CopenPayは、地球への負担を減らしながら、コペンハーゲンの魅力をより多く体験できるようにしています。それは、楽しく、環境に配慮した、有意義で思い出に残る体験を創造することです」現在、コペンハーゲン政府観光庁は、観光やホスピタリティに携わる24の団体が試験的にCopenPayに参加していることを発表している。今夏の評判次第では、通年プログラムとして展開する予定だという。観光客が増えるとどうしてもごみが増え、現地のエネルギーを過剰に消費してしまう。CopenPayはそうした環境負荷を減らすためのプログラムなのだ。CopenPayの目的は、持続可能な観光を促進することだけでなく、旅行者が帰宅後も自分の居住地で環境に配慮した行動をするよう促すことだという。他の国や地域でもこのようなシンプルなプログラムが導入されれば、もっと多くの人が旅先の環境に配慮するようになるのではないだろうか。【参照サイト】Visit CopenhagenCopenhagen introduces CopenPay, rewarding visitors for going greenCopenhagen rewards ‘green-acting’ tourists with free perksRewards for tourists who litter pick in CopenhagenCopenPay/Wonderful CopenhagenDansk IndustriPick Up Litter and Get Free Stuff in Copenhagen This Summer Through Eco-Conscious Rewards Program2024/7/17IDEAS FOR GOOD[原文はこちら]IDEAS FOR GOOD は社会を「もっと」よくするアイデアを集めたウェブメディアです。最先端のテクノロジーから、思わず「なるほど!」と言いたくなる秀逸なデザインや広告、政府の大胆な取り組みにいたるまで、世界中に散らばる素敵なアイデアをお届けします。