気候変動について、初めて見聞きしたのは、いつ、どこでのことだっただろうか。今やインターネットに情報が溢れているが、何かしらのきっかけは幼少期に学校で得ており、「授業で地球温暖化や酸性雨について学んだ」という人は多いだろう。しかし、今まさに現在進行形で起きている“地球沸騰化”の複雑な現状について、さらには自分たちができるアクションについて学ぶ公式な機会はほとんどなかったかもしれない。気候変動は、確実に私たち一人ひとりに影響を与えているにも関わらず……。このような気候変動教育の欠如は、日本だけの課題ではないという。ユネスコの研究によると、研究対象となった教育政策とカリキュラムの半分以上では、気候変動について全く言及がなかった(※1)。この現状について、英国・スコットランドでは「市民から」指摘が上がった。Climate Change People’s Panel(気候変動市民パネル)が、スコットランドの気候変動対策について調査を行った結果、気候変動教育が不十分であるとして、小学校から高校において気候変動を必修科目としてカリキュラムに取り入れるよう提案したのだ。同パネルは、ランダムに抽出された23名の市民によって形成され、以下の2つの質問に対して推奨事項を提示するよう依頼を受けていた。スコットランド政府は、気候変動とスコットランドの気候変動目標について国民をどれだけ効果的に関与させてきたかスコットランド政府は、スコットランドの気候変動目標の達成を支援するために国民に情報を提供し、参加させるために他に何ができるかこれらへの回答として、18の推奨項目が提示された中で「若年世代への気候変動教育」が最初に示されたのだ。カリキュラムの作成には子どもたちの関与が必要であると指摘され、義務化によって子どもたちが親や地域にまで広く影響を与えることが期待されている。具体的には、エネルギー生産やグリーンジョブについての基本的な理解につなげることが推奨された。気候変動対策における教育の重要性は以前から指摘されており、2019年には、イタリアにて世界で初めて気候変動が必修科目となった。その後もカンボジアやアルゼンチンなどで同様の取り組みが導入された。今回のスコットランドの事例では、気候変動教育への注力が市民の目線から指摘されたことも特徴的であった。このように気候変動対策において市民を取り込む動きは、世界各地で生まれている。日本では「気候市民会議」とも呼ばれ、2020年に札幌市で始まったことを皮切りに徐々に広がり、2024年3月には杉並区においても開始された。市民と足取りを揃えることは、政府にとって大きな一歩となるだろう。実は、スコットランド自治政府は「2030年までに温室効果ガス排出量を1990年比で75%削減」という目標の撤回を発表しており(※2)、気候変動対策において困難な現状に直面している。将来世代を含む市民と協働し、教育面から立て直しを図ることはできるだろうか。※1 Learn for our planet: a global review of how environmental issues are integrated in education|UNESCO※2 スコットランド、30年排出削減目標を撤回、新たな政策パッケージを発表|JETRO【参照サイト】Scottish Parliament People’s Panel reviewing the Climate Change (Scotland) Act 2009Climate change should be a compulsory subject in all Scottish schools, people’s panel says | Euronews‘Climate change should be a compulsory school subject’|The HeraldMake climate change a compulsory subject, says panel|tes magazineすべての科目に気候変動を。学校教育が次世代の若者にできること|世界経済フォーラム2024/5/10IDEAS FOR GOOD[原文はこちら]IDEAS FOR GOOD は社会を「もっと」よくするアイデアを集めたウェブメディアです。最先端のテクノロジーから、思わず「なるほど!」と言いたくなる秀逸なデザインや広告、政府の大胆な取り組みにいたるまで、世界中に散らばる素敵なアイデアをお届けします。