EUの気候変動研究機関コペルニクス気候変動サービス(C3S)は6月5日、2024年5月は観測史上最も気温が高く、12ヶ月連続で世界平均気温が過去最高を記録したと発表した。2024年5月の世界平均気温は、1991年から2020年の平均を0.65℃、1850年から1900年の産業革命前平均を1.52℃上回った。産業革命前の平均を1.5℃以上上回ったのは、2023年7月から11ヶ月連続となった。(出所)C3S過去12ヶ月の移動平均では、2024年5月に、産業革命前と比べ1.63℃上昇となり、初めて1.5℃を上回った。(出所)C3S地域別では、赤道付近の高緯度地帯で気温上昇が大きい。また地中海付近、日本の東岸沖、大西洋やインド洋の南部でも気温が上がっている。(出所)C3Sまた世界気象機関(WMO)は6月5日、5年後までの気候変動の見通しを分析した報告書を公表。2024年から2028年の間に、少なくとも1年は一時的に1.5℃を超える可能性が80%あると発表した。2024年から2028年までの各年の世界の平均表面付近気温は、産業革命前と比べ1.1℃から1.9℃高くなると予測した。但しWMOは、2024年から2028年までの全体平均で1.5℃を超える確率は47%とし、またパリ協定の1.5℃目標に対する敗北を認めるには早いという見方を示した。これらを受け、アントニオ・グテーレス国連事務総長は同日、演説を実施。1.5℃目標を達成するには、世界の温室効果ガス排出量を2030年まで毎年9%以上減少させる必要があると表明。世界の排出量の80%を占めているG20諸国が、先頭に立つ責任と能力があると伝えた。グテーレス事務総長は、対策の方向として、G20諸国が気候行動計画、エネルギー戦略、化石燃料の生産と消費に関する計画を、1.5℃目標と整合性のあるものにし、さらに補助金を化石燃料から再生可能エネルギー、バッテリー、送電網の近代化、脆弱な地域社会への支援に振り向けること、さらに、G7と経済協力開発機構(OECD)加盟国は、2030年までに石炭燃料を廃止し、化石燃料を使用しない電力システムを構築し、石油とガスの需給を2035年までに60%削減することを掲げた。OECE非加盟国も、石炭火力発電を2040年までに全廃するよう伝えた。表明された石炭火力発電には、G7等で言及される「Unabated(削減努力のない)石炭火力発電」という表現は用いられておらず、全て石炭火力発電を全廃すべきと伝えている。また、グテーレス事務総長は、地方自治体、企業、金融機関に対しても、2030年の国連気候変動枠組条約第28回ベレン締約国会議(COP30)までに、移行計画(トランジションプラン)を策定することを要請。移行計画は、国連の「非国家主体ネットゼロ・エミッション・コミットメント専門家グループ」が2022年11月に発表したガイドラインに準拠すべきとした。さらにグテーレス事務総長は、全ての国に対し、化石燃料企業の広告出稿を禁止するよう要請。またメディアに対しても、化石燃料の広告を取り扱わないようにすることを求めた。広告代理店やPR会社に対しても、化石燃料企業の新規クライアント開拓を直ちにやめ、既存のクライアントについても終了させる計画を策定すべきとした。グテーレス事務総長は、「どれも慈善事業ではない。啓発された利己主義なのだ」と述べ、企業に対し、慈善事業ではなく、自己のための事業としてスケーラビリティのある形で対策を進めることをあらためて求めた。【参照ページ】Hottest May on record spurs call for climate actionGlobal temperature is likely to exceed 1.5°C above pre-industrial level temporarily in next 5 yearsSpecial Address on Climate Action by Secretary-General António Guterres株式会社ニューラル サステナビリティ研究所[原文はこちら]2024/6/9Sustainable JapanSustainable JapanのホームページFacebooktwitter