ユトレヒト大学の研究者らは、大西洋子午面循環(AMOC)が2050年以前に崩壊する確率は42%から76%とする研究成果を発表した。同研究ペーパーをCNNが8月3日に報じ、各メディアも追随した。大西洋子午面循環(AMOC)とは、南半球や熱帯から北大西洋の寒冷な海域へ暖かい表層水を運ぶ大規模な海水循環。循環の過程で、冷たく塩分の多い海水は海底に落ち込み、再び南へと流れていく。大西洋重層循環により、南半球のオーバーヒートや北半球の凍結を防ぐとともに、栄養分を海洋生態系全体に行き渡らせる役割も果たしている。この大西洋子午面循環は過去数十年で、強度が徐々に低下していることが観測されており、将来の気候変動でさらに急激に強度が弱まることが懸念されてきた。そこで、ユトレヒト大学の研究者らは、複雑な気候モデルを用いて、大西洋の大規模な海洋循環が崩壊した場合のシミュレーションに成功。論文は、2月8日に科学誌『Science』に掲載されている。減少の要因としては、近年の気候変動により、グリーンランドの氷が溶けて莫大な量の淡水が北大西洋に流入し、大西洋子午面循環の動きを妨げていることや、表層の淡水フラックスが変化していることが関係しているという。同論文で示されたシミュレーション結果では、大西洋子午面循環が崩壊すると、欧州の気温は、10年間で3℃以上低下する可能性があるという。これを、現在の気温の変化度と比較すると、気温変化の影響が過去例をみないもとなる。気温上昇が予測される中で、欧州の気温が下がることは好ましいようにみえるかもしれないが、その影響は広範囲に及び、他の地域では温暖化が加速、降水パターンも変化させるという。さらに、急激な海洋循環の崩壊により、欧州の海面が100cm上昇するとも予測されている。同じ研究者らが新たな執筆した論文では、大西洋子午面循環(AMOC)が崩壊する時期をシミュレーションで算出。その結果、崩壊時期は2050年を平均とし、10%から90%信頼区間で、2037年から2064年と推定された。また、2050年以前に崩壊する確率は、59%を中央値とし、42%から76%と算定された。現在、同論文も、査読付き雑誌への掲載に向け査読中にある。【参照ページ】Probability Estimates of a 21st Century AMOC CollapsePhysics-based early warning signal shows that AMOC is on tipping course株式会社ニューラル サステナビリティ研究所 [原文はこちら]2024/8/5Sustainable JapanSustainable JapanのホームページFacebook